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西城秀樹さんのこと。 [人]

15年前に一度だけ、お会いしたことがある。

千葉県に本社のある、某冠婚葬祭業者が発行する季刊誌の巻頭インタビューのゲストだった。

子どもの頃からブラウン管の向こう側で輝いていた大スター。まだ30代だった僕は、仰ぎ見るような眼差しを隠せなかったことだろう。

しかし、ご本人はそんな僕にはおかまいなしに、まるで10年来の友達のように気さくに接してくれた。テレビでYMCAを熱唱する姿とは裏腹に、物静かな方だった。

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場所は、天王洲の海辺にあるブルワリー。初夏の日射しが少しまぶしいウッドデッキのテーブルでお話をうかがった。

ヒデキさんは海の男だった。暇があればサーフィンを楽しみ、ダイビングはインストラクターの資格を持つ。自然の中で過ごすことが多かった。

「レコーディングスタジオにいる時間が多いんだけど、コンピュータや電子機器に囲まれて仕事をしていると、自然に触れたくなるんだよね。仕事終わりに夜明けを目指して仲間とよく1台のバンに乗って、館山あたりの海に行ってたよ」

浜辺に人がいたら、自分から声をかけると聞いて驚いた。

「海が好きというだけで、分かり合えるものがあるからね。芸能人だろうが会社の偉い人だろうがそんなの関係なくて、ただの人と人とで繋がれるんだ」

自分から心の構えを外すことで、出会いは生まれるんだよと、まるで学校の先輩のような口ぶりだった。

当時、ヒデキさんは結婚して熱海に移り住んでいた。その場所を選んだ理由を聞くと、心温まるエピソードを披露してくれた。

「たとえば真冬でも、大切な人が遊びに来ると、淹れたてのコーヒーをポットにつめて、一緒に裏の山に登るの。しばらく歩いて、視界が開けるところに出ると、そこで腰を下ろすのね。すると目の前にばーんと太平洋が広がってるんです。雄大な海を眺めながら、湯気の立つ珈琲を一緒に飲むんですよ。これがホントに美味いの。たった一杯の珈琲で、とっても贅沢な気持ちになれます。しかもね、その時間はずっと想い出に残る。そんな暮らしが、気に入ってるんです」

40代半ばで突然の結婚。この方は結婚しない人だと思っていたから、唐突に思えた。僕は不躾ながら、奥様を選ばれた理由を尋ねた。するとこんなふうに答えてくれた。

「彼女ね、初めて食事に行った時、お店を出たあと、『それじゃ!』って自転車で帰っていったんだよね(笑)。その姿を見て、いいな~って。ふつう女の子ってそういう時、カッコつけたり頑張るじゃん。でもね、彼女はまったく飾らない人だったんだよね」

わずか2時間ほどのことだったけれど、エピソードの一つひとつにお人柄が忍ばれて、男として好きになった。

華やかな芸能界の中で頂点を極めた人なのに、そこから漂う印象は、「わびさび」の雰囲気だった。飾らず、自分を大きく見せようとせず、話し方も物静かで、僕は少し戸惑っていた、と思う。

ライターという仕事柄、数多くの有名人、著名人、文化人の方々をインタビューをしてきた。インタビューという仕事は、一期一会という言葉がぴったりだと僕はいつも思う。

初めてそこで会い、いきなりその人の生き様に疑問を投げかけ、時には内面をえぐるような質問をする。それほど濃密な時間を過ごしながら、次に会えるかどうかはわからない。

数年に一度、またお会いしたいという衝動にかられる人がいる。西城秀樹さんはまさにそのお一人だった。

あれから数か月後に、脳梗塞で倒れたと聞いた時は、本当に驚いた。その後、無事に復帰されて安堵したが、二度目の脳梗塞では後遺症を抱えたと聞き、言葉が出なかった。

しかしそれからの秀樹さんの奮闘ぶりは、折に触れ、テレビ等で拝見し、陰ながら応援していた。身体の自由がきかない中でもステージに上がり、一生懸命唄う姿を見ては、ハラハラしながらも、心からの敬意を抱いてきた。

秀樹さん、お疲れ様でした。僕もどこかの山で海を眺めながら、珈琲を飲む時間を作りますね。

心よりご冥福をお祈りします。

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